ジョアン・ジルベルトへの、あふれる想い
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ボサノバのゴッドファーザー
7/6に亡くなった、ジョアン・ジルベルト(João Gilberto)。
まさにこの人から、60年代を席巻したボサノバが生まれたのです。
時を同じくしてブラジルに軍事政権が成立したり、ジョアンの身の上にも不幸なことが沢山あった時代でした。
ボサノバの夜明け
ジョアンは若い時に、仲間と集まって曲を作ったり歌ったりしていたそうですが、その時に隣人から文句を言われないように小さい声で歌っていたそうです。
それがこのクールで静謐な雰囲気につながっているんですね。
その頃の仲間からも、「ギターと歌はあいつが一番うまかった」と言われるほど才能がありました。
ギター
ジョアンは、バチーダ奏法という奏法を生み出したとされています。
右手の親指〜薬指の4本を使った奏法で、サンバのリズムとハーモニーをギター一本で同時に表現できる、幕の内弁当のような奏法です。
歌
歌は、技巧派では全然なく、素朴に仕掛けなくさらっと歌うタイプです。
でも、実際にボサノバの曲を歌ってみるとわかりますが、ハーモニーが複雑なためきれいに歌うのはすごく難しいのです。
これをさらっとこなせるなんて尊敬するなー
作曲
作曲はあまりせず、主にアントニオ・カルロス・ジョビンの曲や古いサンバの曲をカバーしていました。
選曲がたまりません。
ボサノバは、いい。
クールで品が良く、おしゃれで、でも気取らず、静かで、柔らかくて心地よい声でさらっと歌う。
今僕が自分のトリオでやろうとしているのも、そんなイメージです。
自分なりのかたちでジョアンみたいな表現をしていきたい。
来日公演の時の逸話
また別の公演で
こんなこと、t.A.T.u.でも許されませんよね。 でもいいんです。ボサノバだから。
Getz/Gilberto 【アルバム】
このアルバムがきっかけとなって、ボサノバが世界的にヒットしました。
逸話
テナーサックスのスタン・ゲッツ(ドラッグやりすぎ)とジョアン(気むずかしい)がとても仲が悪く、レコーディング中けんかばかりしていたそうな。
この時はジョアンの盟友、アントニオカルロスジョビン(p)もレコーディングに参加していて、通訳をしていたのですが、
ジョアン
ゲッツ
アントニオ
ゲッツ
というやりとりが度々あったそうです。
ヒヤヒヤものですね。
ジョビンが通訳じゃなかったらこの名作は生まれていなかったかもしれない…
曲
イパネマの娘 The Girl From Ipanema
ボサノバの代表曲で、普段ジャズを聴かないという人でも知っているかもしれません。
高校生の時にこの曲の、間奏のゲッツのサブトーンを聴いて、僕はサックスを始めました。
色んな楽器が好きですが、テナーサックスほど琴線にふれる音色にはまだ他に出会っていません。
サックス始めてよかった。
ミュージシャン的にいうと、この曲のVerse(Aメロ)のコード進行は、デューク・エリントン(p)の「A列車で行こう」をベースにしています。
同じアルバムに入っている、Desafinadoとかもそうですね。
ボサノバではけっこう使われるコード進行です。
9thから始まるメロディーのセンス、そして6小節目のSubVがおしゃれで美しくて、ブリッジのサブドミナントモーダルインターチェンジが…(以下略)
個人的には、アストラッド(ジョアンの当時の奥さん)が歌っている英語の歌詞はちょっとダサいと思ってしまいます。
(ポルトガル語は理解できないからかっこよく聞こえるだけかも?)
でも、やっぱりそれも含めていいんですよねー。
僕は、それには反対です。
というかそもそも英語の歌詞が好きじゃないんだけれど。
男の子だったらこんな曲調にはならないはずです。
どうしても男にしたいんだったら別の曲を歌えばいいのに、と思ってしまいますね。
ドラリス Doralice
僕は実はこの曲が、このアルバムの中で一番好きです。
メロディがなにせいいんです。
イントロでのゲッツとの掛け合いから、エンディングのドゥルルーでさくっと終わるところまで。
センスよく流れをまとめて、起承転結を作っているのがとても感動します。
日本語に訳してもすごくよくなると思う!
テンポは意外と早いですが、終始リラックスして聴けます。
こういう雰囲気の曲をたくさん書きたいな。
アルバム総評
全曲とてもよくて、最高のアルバムだと思います。
ジョアンも、ゲッツもたまらん…
ある意味、似た雰囲気の曲ばかりなのですが、何百回聴いても飽きないですね。
それはやっぱり、洗練されたハーモニーや緻密なアレンジ、サックスや歌をはじめとする楽器の音色の統一感(個性)など、音楽的に重要な部分が飛び抜けて素晴らしいからだと思います。
昔はCDもLPも持ってたけど、デジタル化の波に乗って売ってしまいました。
でもやっぱり、もので持っている方が聴きたくなるんですよねー。
また買おうかな…
想いあふれて Chega de Saudade
ボサノバのはじまり、とも言われている曲です。
メロディの一つ断片(モチーフともいう)が、表情ゆたかなハーモニーに乗って形や色を変えながらずっと続いていきます。
はじめて聴くと、「なんか覚えにくい曲だな」と思うかもしれません。
というか、何回聴いても覚えにくいです。
でも、一つ一つの音ではなく、ハーモニーのカラフルさとか、全体の流れを捉えると、この曲のよさがわかるんじゃないかと思います。
アントニオ・カルロス・ジョビン (Antônio Carlos Jobim)
ジョアンの永遠の盟友
ピアニスト、作曲家。
この人がいなければ、ゲッツとジョアンが喧嘩してGetz/Gilbertoは出来上がっていなかったかもしれない…
ということもありますが、それを抜きにしてもボサノバには欠かせない人物です。
まず、ジョアンの盟友ということもありピアニストとしてボサノバの名盤には大体参加しています。
そして!曲がよいのです!
ジョアン・ジルベルトはあまり作曲はしていません。
ジョアンが歌った名曲は、古いサンバのカバーか、アントニオの曲なのです!
イパネマの娘、想いあふれてもアントニオの作曲です。
他にちょっと挙げるだけでも
- Triste
- Wave
- おいしい水 Água de Beber
- Desafinado
- One note samba
・ ・ ・ などなど、枚挙にいとまがありません。
ていうかボサノバの名曲ってほとんどジョビンが作ってますね。
ジョアンが「ボサノバのゴッドファーザー」とするなら、ジョビンは実の母みたいなもんですかね。
伝わるかな…
そして彼の「Triste」は僕のお気に入りで、トリオでもよく演奏しております!
他にも沢山演奏してるはずだけど映像がない…
映画(2019/8/26公開予定)
ジョアンの映画、 Where Are You, João Gilberto? ジョアン・ジルベルトを探して が8/26から、各地の映画館で公開予定だそうです。
僕は基本的には、最近の映画はコモディティ化していて面白くないと思っています。
有名人(ミュージシャン)のドキュメンタリーとか、リメイク(実写化)とかばかりで…
たまに面白いのあるけれど。
でも、ジョアンにはとても思い入れがあるので、これは観ます。
面白いといいな。